第9章 Season 1 苛立ち
翼とのことは、誰にも言えなかった。
だけど、翼はあの日から3日も経っているのに、未だに家にいる間は私の近くにいる。
別に何かしてこようとしてるわけではないのだろうが、更に、治さんや子供たちが見当たらないときは、特に酔っ払ってるわけでもないのに翼が私にべったりとくっついているようになった。
今も子供たちが寝た後、私は二階に誘われて、彼らと一緒にすごしている。
「ねぇ、慧、これはなんなわけ?」
紘がいらだったように聞いてきた。
紘ともあれ以来関係を持っていなかった。
紘は相変わらず忙しくて、今日は家にいるんだと思うとなんだかうれしくなってしまった。
「何って、つばさっち」
だんだんそれに慣れてきて、もともと翼の事が可愛くて仕方なかった私は、嫌じゃなかったので、黙ってそのままにさせておいた。
上目遣い気味に私を見つめる目に弱い、というのもあった。
「そりゃ、見ればわかる。なんでずっとくっついてんだって聞いてるの」
「知らないよ。勝手にくっついてんだから」
でも何か、息子が出来たみたいで可愛いんだよね、と私が言うと、翼がぶぅと頬を膨らませた。
「僕は、慧さんの心の恋人なの。邪魔しないで」
そう言いながら、翼はぎゅうっと私の身体を抱きしめてきた。
近くで見ている裕も、なぜ翼が急にこうなったのか理解できずに複雑そうな顔をしていた。
「そうなの?」
心の恋人、というところを聞いてるのだろう。裕が私に質問してきて、
「まさか。つばさっちが勝手に言ってるだけ。そのうち飽きるんじゃないかな、と思ってほってる。別に子供たちや治さんの前でしてるわけじゃないし、いいかなって」
私がもう、諦めてますというような風に言うと、
「よかねーだろ。つかお前ちょっと離れろや」
紘が翼の肩に手を掛けた。
「やーだー。僕が慧さんを守るんですー。癒してあげるんですー」
更にきつく締めてくる。
「でも、つばさっち、いい加減暑いし、苦しい。ちょっと離れる?私なんか恥ずかしくなってきたよ」
そう言うと、しぶしぶ翼は私から離れてくれた。