第2章 分からない人
無意識に体が逃げてしまう。
「今更逃げてんじゃねぇよ……無理矢理されてぇのかよ、あぁ?」
低くて迫力ある声で凄まれ、体がより硬くなる。
「ちっ……面倒な女……」
「ああぁっ……」
下の突起を撫でて、コロコロと転がすように弄られ、激しく擦られる。
「やぁっ、ンんっ、ふぁっ……」
そのまま深く、ねっとりといやらしいキスをされ、体の力が抜けていく。
吐き捨てるように言われた言葉とは裏腹に、行動は優しくて。無理矢理する訳でもなくて。
怖さはすっかりなくなっていた。
ほんとに、怖いんだか優しいんだか。
「ふふっ……」
「あ? んだよ、何笑ってやがんだ」
「碧棺さんて、優しいんですね」
「……は?」
私が笑うと少し眉間に皺を寄せて、不満そうに言って、次にはコロッと驚きが混じった呆気に取られた顔をした。
〔あ、この顔は、可愛いな……〕
なんて言ったら怒るだろうな。
「訳わかんねぇ……。つか、お前、んな笑えるくらい余裕なら、もういけるよな」
「え? ひっ……ゃあぁああぁっ!」
「くっ、キツっ……はっ、クソっ、お前っ、中締めんなっ……はぁ……」
突然中に挿入され、圧迫感とビリビリする刺激に、体を仰け反らせながら達してしまう。
挿れただけでイクなんて、私の体は一体どうなってしまったんだろう。
こんな事初めてで、彼とシていると、新しい事ばかりでパニックだ。
ビクビクと体を震わせている私を、彼はゆっくりだけれど、確実にいい場所を探りながら揺さぶってくる。
「あー、やっべぇわ、お前ん中っ……はぁ……」
薄く開けた目で彼を見ると、興奮したようにギラついた赤い目と視線がぶつかる。
ゾクリとした。まるで、目でも愛撫されているみたいに、全部が溶けてしまいそうだ。
「あっ、やっ、そこだっ、めっ……ぅんンっ……」
「ここか? あぁ? ん……はぁ、締め付け過ぎだってのっ……はぁ……ぅ、くっ……ぁ……」
少し辛そうに眉を顰めて、打ち付ける腰の動きを早める。
ただ揺さぶられ、肉のぶつかる音と水音が耳までも犯していく。
この人との行為に慣れてしまったら、一体私はどうなってしまうんだろう。
いつか離れる人なのに、溺れては駄目だ。
しっかりしろ、自分。