第3章 飼われた鳥は自由か不自由か
興味無さそうに、また窓の外に目を戻す。
「んなもん、ほっときゃ治んだろ」
「駄目ですよっ! 小さい傷だからって、甘く見ちゃいけませんっ!」
少し驚いたように目を開いて、すぐにニヤリと笑った。
こういう顔で笑う時は、あまりいい事を言われた試しがない気がする。
「ほぉ……じゃ、お前が手当してくれんのかよ」
「まぁ、救急箱さえあれば……」
肩に手を回されたまま、顔が近づく。
「必要ねぇ。お前が舐めれば消毒完了ってな」
やっぱり。
「おら、早くしろ」
左馬刻さんの首に、おずおずと舌を這わせる。
くすぐったいと笑う左馬刻さんが、ちょっとだけ可愛い。
恥ずかしくなって、体を離して下を向くと、顎に指が触れて、上を向かされる。
「これ以上の事してんのに、つまんねぇ事で恥ずかしがってんじゃねぇよ」
「うぅ……」
片方の口角を上げて笑い、触れるだけのキス。
最近やたらキスされているな。キス、好きなのかな。
お金の代わりに売られた割に、結構甘やかされている気がするけれど、この人は一体何がしたいんだろう。
気づいたら自宅に着いていて、どうするのか待っていると、手を取られて車から降ろされる。
けれど、左馬刻さんを招待した事はないのに、私の前を歩いて、迷いなく私の部屋まで歩いていく。
考えてみれば、元彼の事を調べているだろうから、当然と言えば当然か。
大人しく着いて行き、扉の前で止まる。
「鍵」
「あ、はい」
下僕のようだなと思いながら、大人しく鍵を開ける。
自分の部屋だとでもいうように、さも当たり前に部屋へ入って行く。
そうだ、とりあえず先に傷の手当てをしないと。
急いで救急箱を取り出して、立ったまま狭い部屋を見回している左馬刻さんの手を引いて座らせる。
「おい、何だ急に……」
「いいから、じっとしてて下さいね」
消毒液を傷に出来るだけ優しくつける。
「んな事する必要ねぇっつってんのによ……」
「私が気になるので、手当てさせて下さい」
仕方ないというように、左馬刻さんは大人しくしてくれている。
このチャンスに、素早く手当てする。
手当てが終わり、片付けていると左馬刻さんがこちらを見る。