第3章 出会い~赤司side~
部室で着替え始めて、間もなくに人が入ってくる。
僕は振り返らずに口を開いた。
「着替え中だ」
「そう言うな。実渕達が心配してくれてたぞ。お前の手を」
「バスケには問題ないと言ったはずだが?」
「そう言うなって。とりあえず、練習前に手当くらいさせろ。じゃないと俺があいつらに怒られる」
「……それだけじゃないんだろ」
僕は千尋へ顔を向けて呟く。
千尋はフッと息を漏らすと救急箱を取りながら呟いた。
「……図書室で助けた女子、隈井征子って名前だったんじゃないか?」
「なんだ。やっぱり今日のパートナーは千尋か」
「……」
僕の言葉に千尋は肩を竦ませる。
が、そこはどうでもいいように思えた。
僕が着替えていて、千尋は「手当てをしに来た」と言った。
それで何故、彼女の話になる?
「千尋。隈井について知ってることを話してくれ」
僕が呟くと千尋はフッと笑う。
「聞いて後悔するなよ」
千尋はそう言うと、僕のそばのベンチに腰を下ろす。
僕は着替えを済ませ、千尋の隣へと座り、赤くなった右手の甲を差し出した。
千尋はそれを合図に、手当てをしながら話し出す。
その内容は、僕が予想しなかったものだった。