【名探偵コナン】生まれ変わったら名探偵の姉でした。
第10章 〜届ける為に、響かせる為に【原作6年前】〜
ドラマの中で刑事は公安警察としての任務や、違法捜査に抵抗感を持つシーンもある。主人公の少女が加害者に対して自分を重ね、過去の話に触れて「こういう生き方も出来るじゃないか」と説得しているシーンもある
そんな素晴らしい作品の主役に私が選ばれ、大事な曲の作詞までも任された事は光栄すぎるし有り難いと思った。ミステリー作家の娘で、未来に名探偵となる新一の姉である自分にピッタリだなぁと感じた。そして何より『多くの事件を減らすきっかけになれば』、誰かの心に寄り添う歌』になれば……。そうなるのなら、絶対このお仕事に挑みたい
そんな必死な想いやドラマと作詞のオファーの報せを受けて、家族三人は大層喜んでくれた。と言っても、新一だけは「探偵物じゃないのかよ……」とそこだけ不満そうにしていたがーーー
そうして、私は主役の少女と成って他の役者さん達と共に熱の篭った渾身の演技を披露し、少女や刑事さんの苦悩と思想を描写させたような歌詞を生み出せた。曲はスタンダードなポップ調でクールビューティーを意識した。全ての視聴者の共感を貰えるように、世間で密かに傷つく誰かが希望を得られるように、過ちを犯そうとしている者が踏み止まれるように……
元々公開前から内容が良いから注目を集めていたので、私や他の俳優陣がバラエティや雑誌で撮影秘話を語ったり、自分が何度か事件に遭遇して秘めている心境を語る機会もあった。お陰で無事に秋頃テレビで公開されると、世間で大きな話題となったのだ
ドラマの視聴率や私の主題歌PVの閲覧数が回を重ねる毎に上昇していき、曲は歌番組でクランプダンスと共に披露するとスタジオの歓声が凄かった
それこそドラマの影響を受けて事件を起こした犯人達が自首しに来たり、未解決事件の捜査を上層部達から急かされた。時に捜査中の事件に周囲が協力的であったりなど……。兎に角、全国的に警察組織が大忙しになってるそうだ。事件多発地帯で有名な米花町でさえ事件数に減少が見込まれる
更にはカウンセラー施設に過去の事件被害者が押し寄せ、鬱や加害者への深い憎悪に悩まされる人が存外多くいたのだと言う
そしてドラマの放送が始まって暫くした頃、事務所の経由で私が推理小説家と元世界的女優の娘である事を正式発表し、ニュースは「良い衝撃のオンパレードだった」と一層賑やかになった───