第2章 好きな人とは
「モテてはいたけど本人は気付いてないよ。だって炭治郎だし」
「…なんとなく納得。無意識に人をたらし込んでる感じか」
なるほど、と苦笑しながら華はグラウンドを走る炭治郎をチラリと見やる。今日の体育はスポーツテストということで生徒は校庭に集まっていた、まだ冨岡の姿はないが男子はなにやら楽しそうに走り回っている。
華と麻衣の隣にいる善逸はその男子に含まれていない。
「何?華ちゃんも、もしかして麻衣ちゃんも炭治郎のこと…っ!??」
ハッと何かに気付いたように善逸は口を押さえたが華と麻衣は「いや、違うし」と声を揃えて否定する。善逸は「違うの?」と首を傾げる。麻衣に好きな人が居るというのも聞いたことは無い、華自身も特に好きな人間は今のところ居ない、好きな人が居ればバレンタインという一大イベントにはもっと力が入るだろう。
「素直にモテてたんだろうなぁって思っただけだよ。そもそも私は好きな人いないし」
「私はいるよ?」
「「えっ!!?」」
「おい、授業は始まってるんだが…誰だ騒いでるのは?」
麻衣の突然のカミングアウトに思わず声を上げてしまった華と善逸は慌てて口を押さえる、叱責したのは冨岡だ。話に夢中で気付いてなかった二人は静かに登場していた教師にばれないようさっと姿勢を直すと何事も無かったように涼しい顔をして誤魔化した。
あぁぁぁあ!気になる!麻衣の好きな人!!
早く授業が終われ、華は麻衣に詳細を聞くべく心の中で強く祈った。体育は嫌いじゃない、寧ろ好きだ。だけど今は麻衣の好きな人が誰なのか気になって仕方がないのだ。体育が終われば今日はもう終わり、聞き出すチャンスは放課後。聞き出すチャンスを虎視眈々と狙う華、その隣では善逸が少し考える素振りを見せては居たがその姿に華が気付くことは無かった。
そして時刻は放課後、今日はバイトが無い事を確認していた華は麻衣をとある場所へと誘う。そこは華が気に入っているカフェだ、ここもまたケーキが美味しいので放課後の華の寄り道の場所の一つでもある。