第3章 突撃訪問
「初めて会った時から、友達じゃなかった。私我妻君の事好きだったんだって」
柑橘系が好きかと問われたあの日の笑顔で落ちていた。
一目惚れなんて自分がするとは思っていなかったからこそ、まさかこれが恋だなんて想像も付かなかった。
「自分でも気付いてなかったんだよね。だから友達としての友愛だって思い込んでた」
「え?...え?」
どういうこと?と聞きたげな善逸の表情。どうやら話の理解が追いついていないようだと分かる。つまり、と華は善逸が持っているチョコを指差した。
「それは義理じゃなくて本命です」
「ほっ...!!?」
予想していなかった言葉に善逸が思わず咳込む。咳込んだ影響なのか顔が赤くなっていく。
もしかしたら華が衝撃的な告白をしたからかもしれない、そう思うと華は少し申し訳なくなった。
「大丈夫?」
咳込む背中を擦ると善逸が大丈夫と言うように片手を上げた。その表情は相変わらず混乱している様子だ。
「だ、大丈夫...」
「困らせるつもりはなかったんだけど、なんかごめんね」
いつもは少しだけ高い目線が今は近いことに華はドキリとする。チョコを渡すだけのはずが、誤解とすれ違いが続いている今のこの状況は解決したかった。
笑っては貰えないか。
「私、柑橘系のフルーツが好きなの」
「うん。それは知ってるよ、制服採寸の時に聞いたよね」
善逸の記憶にも自分が残ってること、自分だけが忘れなかった訳では無かったことになんだか胸がきゅうと苦しくなる。切ないからじゃなく嬉しくても苦しくなるなんて初めて知った。
「でも、この前気付いたの。ビタミンカラーが目につきやすくなって集めちゃうのは何時からだったかって」
言われれば華の周りにはいつも黄色やオレンジの物が多かった。善逸はそんなことを思い出しながら華を見つめる。
「我妻君と初めて会った時に髪色がすごく綺麗で、きっとそれからだなって」
「それだけで?俺が言うのもアレなんだけど髪色だけで人を好きになるのは駄目だよ!?」
至極まともな正論を返す善逸に華は目をパチパチと瞬かせた後、思わずハハハと笑い声を上げてしまった。
「そ、それはそうだよね。うん、確かにそう。でも私髪色だけで好きになったりはしないよ」