第3章 ─ かくとだに ─
「。明日の休みは街に出掛けようか」
不意なお誘いに、頭の中でぶわぁっと花弁が舞い散った。
思わず箸を持った手を止めてしまう。
「そ、それは、私と旦那様の二人だけで……ということでしょうか?」
「ん?ああ。でも、誰かと行きたいのならそれでも──」
「旦那様と二人きりがいいです!」
二人きり……!あぁまるで恋人との逢瀬のよう!
このまま宙に浮いてしまう勢いで浮かれるけれど、すぐにハッとした。
旦那様はただでさえご多忙なのに、極たまにある休日も旦那様に会いたいという来客の相手で終わってしまう。
それなのに、私に気を遣って出掛けようと誘ってくれた。
嬉しいけど…すごくすごく嬉しいけど……。
「でも、旦那様……せっかくのお休みなのに、たまにはお屋敷でゆっくり休まれた方が……」
と、遠慮がちに申し出てみた。
『なんては健気で愛らしい子なんだ。よし、今すぐお嫁さんにしよう』的な展開を狙っているわけではない。
けれど、そうなったらそうなったで、別に何の問題もないよ。うん。
そんな妄想を脳内で楽しんでいると、旦那様は伏し目がちになり小首を傾げて、私のことを見た。