第8章 ─ はるすぎて ─
多分、お腹の子を気遣ってくれたのだろう。
うん、そういうことできるなら十分立派父親だと思うよ?
けれど、止められて少し落ち込む……。
「抱き締めてくれないのですか?」
「………これ以上は、私が耐えられそうにない」
そう言って身体を離そうとする。
それとなく背けられた顔、でも少しだけ見えた頬は、ほんのり赤く染まっていて。
ああ、もう……いくつになっても可愛いなこの人は!
「あまり無理をしなければ大丈夫ですよ?」
「いや、だが…………」
チラりと目を流した先には、私のお腹。
「最後までしなくても、お口でするやり方もあると聞きました」
「なっ………」
戸惑う旦那様の腕をがっちり掴んで離さない。
私だって、旦那様と甘いひと時を過ごしたい。
「……どこでそんなことを覚えたの?」
「お茶会です!莉子さん達に教えて頂きました!」
東海林様の娘である莉子さんとは、会った瞬間意気投合し、今ではひと月に一回はお茶会をするほど仲良くなった。
他にも仲のいい奥様達を集めて開くお茶会は、流行りの着物や夜の手練手管など包み隠さず情報交換をしている。