第7章 ─ きみがため ─
◇◇◇
の浴衣を直し終えると、その愛らしい寝顔を見ながら、煙管をくゆらせる。
愛しき妻の首筋に残っている赤い跡を手でなぞると、はくすぐったそうに首をひそめて幸せそうな笑顔を零した。
そして……
「旦那様……大好き……」
と……この愛らしさは本当に癖になる。
そんな仕草ひとつで独占欲が満たされて、幸福な男になれる。
思わずサラリと前髪を撫で、額に口付けを落とした。
こんなにも誰かを愛おしいと思ったことはない。
よりにもよって、娘のように慈しむはずだった相手に心奪われるとは……
苦笑を浮かべて、月夜にゆたう煙を目で追った。
「ん………」
「寒かったかい?」
寝息をたてるに、近くにあった布団をそっと掛ける。
ふと、首筋にある花弁のような跡と、浴衣に描かれた蝶が目に止まった。
あぁ、まるで──……
あの幼さの残る可愛らしい少女が、今では、見目麗しい艶やかな娘へと成長しようとしている。
いたいけな少女から、凛とした美しい女性に──
そう。それはまるで……花から蝶へと。