第7章 ─ きみがため ─
くすぐったいと思ったのは旦那様の髪で、押し当てられたのは唇だった。
首筋と鎖骨の間に花びらのような、赤い印がついてしまう。
「私はね……若い頃から事業を拡げようと努めてきたから、本来とても独占欲が強いんだ。欲しいものを手に入れると、早く自分のものにしておかないと安心できない」
付いた印を確かめるように指先でなぞりながら、熱を帯びた低い声で呟く。
「いつも優しいわけではないんだよ。こんな私は嫌いかな?」
普段とは違う、鋭く艶かしい視線に旋律が駆け抜ける。
「……嫌いじゃ、ないです」
胸の中が嵐のような激情が渦巻いて、私は切なげに吐息を漏らした。
「何をされても、嫌いにならないです……だから、私を……弥一さんのものだけに、してください……」
告げた瞬間、奪われるように唇が重なる。
荒々しい口付けだった。顎を掴まれて、舌で唇をこじ開けられ、侵入してきた舌が、先程のように下に絡まり口の中を愛撫する。
濡れた唇は、繰り返される口付けに擦れて、敏感になっていくたまに甘噛みされると背筋がゾクッと震えた。
「は……っ…ん……ふぁ……」
「がいけないんだよ?私を煽るようなことを言うから」
「え……んん……!」
返事をする余裕もない、性急な口付けに身体が火照ってくる。
求められていると感じて、淫らな熱がどんどんお腹の奥に溜まっていく。
すると、浴衣の間から片手が滑り込んできて、膨らみを鷲掴みにされた。
「ひ、あ!っ……!」
今までの優しい愛撫とは違う激しい責めに、心臓がドクンと跳ねた。
痛さと紙一重の危うい快楽が襲いかかる。