第7章 ─ きみがため ─
やっと…やっと、待ちに待ったこの日がきた!
旦那様から妻になってくださいと言われてから、半年の月日が流れてしまった。
祝言の準備とかお仕事の都合とかで、直ぐにとは出来なかったみたい。
でも大丈夫。私が旦那様に想い寄せた二年の間とくらべたら半年なんて可愛いものだ。
あと、確実に旦那様のお嫁さんになれる!これだけで、あと一年くらいは余裕で待ててしまいそう。
何はともあれ祝言の日。
鶴の舞う朱色の打掛は、華やかで今日の天気のように眩しいほどだ。
憧れの花嫁衣裳は少し重くて苦しいけれど、心が途方もなく浮かれているので全然平気。
「お嬢様。お綺麗ですよ」
「…ヤチヨさん。ありがとう」
花嫁衣裳を着せてくれたヤチヨさんが目に涙を浮かべながら言うもんだから、こちらまで泣きそうになる。
いかんいかん。祝言の前だというのに。
どうにか耐えていると、開け放した障子の方から
「孫にも衣装ですね」
と、いつもの淡々とした声が聞こえてきた。
言わずもながな佐渡さんである。
「こんな時くらい嘘でもいいから褒めてくださいよ!」
「はて、褒めたつもりですが」
相変わらず、顔色一つ変えない彼のおかげで涙は止まった。
ん…でも、待てよ……佐渡さんが来たってことは……
「………社長がお待ちしてます」
「っ────!!」
待ちに待った愛しい人の顔を思い浮かべて、胸をときめかせた。