【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第9章 守るべきもの
『お父さんは何で天井蹴れたの?』
『父さんは極真空手やってたんだ』
『空手?』
『そう。お母さんや名前を守るために習ってたんだ』
力は大切な人を守るために使う。
そう教えてくれたのも父だった。
『じゃあ、名前もやる!教えて!』
『父さん、教えるのは苦手だけど…よし。じゃあここに打ってみろ』
掌を出すお父さん。
『ここにパンチすればいいの?』
『うん』
『えいっ!』
父の掌に拳をあてる。
『おおっ!いいパンチだ!』
『えいっ!』
『今度は反対』
『えいっ!』
『脇締めて』
『こう?』
『うん。そうそうカッコイイぞ』
脇をしめて。
打ったら、直ぐに手を引っ込める。
足はタップ。
腰を捻り過ぎない。
色んな事を教わった。
疲れたお父さんはタバコを吸いながら。
一生懸命、父の真似をする私を見ていた。
その後、空手を止めて、お昼寝ごっこしよう言う父は。
私を枕にして寝始めた。
重くて嫌だったけど。
もうあの重みを感じることはできない。
お父さんはもういないから。