【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第9章 守るべきもの
手足が震える。
呂律が回らない。
「えっ?ねえ?名前?どうしたの?」
「悪ぃ。皆、帰ってくんねぇ?」
「はぁっ…はぁっ…」
みっともない。
人前で過呼吸起こすなんて。
苦しさで、生理的な涙が出る。
「大丈夫。安心しろ。俺がいっから」
隆が私を抱き締めて、背中を摩る。
「大丈夫。大丈夫。ゆっくり息しろ。な?大丈夫だ」
私を安心させる声。
その声を聞いているうちに、眠りについた。
『名前。父さんは天井蹴れるんだぞ?』
『そうなの』
『お母さんがいないから、見せてやる』
お父さんは悪戯に笑うと、リビングの壁を蹴ろうする。
そして、そのまま届かずに終わった。
『痛て…お父さんも、もう若くないな…』
『お父さん…大丈夫?』
腰を痛めたお父さんを、心配そうに見る。
すると頭をガシガシと撫でられた。
『ははっ!大丈夫、大丈夫!』
『名前が産まれる前は蹴れたんだけどなー』
未だに分からない。
何でお父さんは天井を蹴る姿を見せたかったの?
私にカッコイイところ見せたかった?
私はお父さんに勝ちたくて、テコンドー始めたけど。
天井は蹴れないから、トリッキングをやってるよ。
今なら天井蹴れるんだ。
見せたかったよ。