【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第7章 Break down
隆がお父さんと被るから、どんどん思い出してくる。
「小学校の時はね、ミニバスもしてたの」
「うん」
「送り迎えはいつも爆音のバイクでさ。チームメイトにからかわれて嫌だったけど、お父さんが好きだった」
「そっか」
「夏休みになるとお父さんがサーフィンするから、サーフボードがビートバン代わりだったの。掴まれーって」
「ははっ!面白ぇじゃん」
「海に流された時の対処方法だーとか言ってね。足の着かないプールに落っことされたりもしたの。それでお父さん、お母さんにすごく怒られてた」
「そりゃ、母ちゃんは怒るだろうな」
うん、でもね。
今なら全部私のためを思ってやってたって分かるよ。
私が困らないようにって。
色んな知識を教えてくれてたんだ。
土の上が一番温かい事。
海流の流れの仕組み。
小学校4年生の私にルートの計算を教えてた事。
温泉たまごを作る実験。
一見、意味がないことかもしれないけど。
私が遭難したり、漂流した時の対処を教えてくれた。
笑って沢山色んな事を教えてくれる時間が、私は大好きだったの。
「そんな風に声殺して泣くなよ」
「………だって…会いたい…」
お葬式の時は涙なんか出なくて。
死んだお父さんを見ても、現実だと思えなかったの。
私はあれから感情を殺すようになっていた。
今、漸く分かったよ。
私はずっと泣き場所を求めていたんだ。
「そうだよな…。なあ?名前。俺、何のためにいると思う?」
そんなの分かんないよ。
今はどうしようもなくお父さんに会いたい。