【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第7章 Break down
「あとは?」
「んー。ピアノ好きだった」
「好きだった?過去形?」
「うん」
だってどんなに上手に弾いたって。
もう褒めてくれるお父さんはいないもん。
昔。
ピアノの練習をしていたら、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
『誰が弾いてるのかと思ったら、名前だったのか。凄いな。お前の音は感性があって、お父さんは好きだな』
『へへっ。ありがとう』
お父さんが笑顔で私を褒めちぎる。
ピアノの先生はヒステリーで、泣きながら練習した日もあった。
それでもお父さんが嬉しそうに、私の演奏を聞いてくれてたから。
「物心つく前から中3まで続けてた。でも、受験あるからって、お母さんが止めろって…」
「そっか」
「あとは全部かじる程度。スイミング、公文、書道、茶道、テコンドー、英語、簿記、パソコン、被服、普通に塾」
「すげぇ量」
「あとは小学校でバスケして、中学の部活でバドミントンとか」
「忙しい一週間になりそうだな」
「うーん。どうだろう?だから友達いないのかな?」
「それはお前の性格のせいじゃね?」
カチンときて、隆にお湯をぶっかけた。
「ごめん。ごめん」
隆は笑って謝るけど、なんかムカムカする。