【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第4章 面影
夢を見た。
懐かしいお父さんとの思い出。
幼い頃。
今日みたいに熱を出した。
普段は母が家にいて。
そういう時は決まって、母がすりおろし林檎を作ってくれたり。
病院へ連れて行ってくれる。
幼かったから理由は知らないけど。
その日に限って、母は家にいなかった。
父は私の枕元に座って、
一晩中、私の看病をしてくれたの。
桶に氷水を張って、冷たいタオルを絞る。
それを私の額にのせて、様子を窺っていた。
母は知ってたんだけどな。
私が一人で大丈夫だって。
薬を飲んで、一晩熟睡すれば。
翌日には直ぐに走り回る子だって。
「父さんが側についてるからな。大丈夫だぞ」
「…うん…」
励ましてるつもりなのか、知らないけど。
私にはちょっと迷惑だった。
眠いから、ゆっくり寝かせて欲しい。
お父さんの不安が、私にも伝わってきて。
こっちが心配になっちゃうよ。
翌日。
母が帰ってきてほっとしたのは、父の方だった。
ねえ。
お父さん。
私は今でも一人で平気だよ。
今度は何もしなくていいから。
だから、そっと側にいてよ。
寂しいよ、お父さん。