【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第21章 隆のために
隆を抱きしめる。
何年経っても、消えることない傷痕。
「名前。悪ぃ…これ以上は…」
「うん。分かってる」
傷を抉るような真似して、ごめんね。
このまま心に刺さった棘を溶かしてあげたいけど。
それが出来ない。
10月31日。
本当に過去へ行けるかも分からないのに。
「隆。何を言えば、私が未来から来たって信じてくれる?」
「ははっ。そりゃ無理だろ」
「カナダに行くことは伝えて欲しい?」
「出来れば伝えて欲しいな。昔のお前なら言わねえだろ?」
「うん。多分ね」
隆の頬を撫でてキスをする。
「ねえ?過去が変わっても、8月3日にあの橋でプロポーズしてくれるかな?」
「するよ。きっとする」
「うん。待ってる」
隆の熱っぽい視線に絆されて。
深いキスをしている時だった。
「ただいまー!ママー!パパー!」
大きい声で1階を探しまわる愛娘のご帰還。
「俺、だいぶお預けされてんだけど」
「この件が片付いたら、ルナちゃんやマナちゃんにえまをお願いしよっか?」
私たち夫婦に暇はない。
それでも、貴方のために。
私は過去へ行くよ。