【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第20章 野菊の墓
単車で走りながら、ずっと父と語っていなかった事に気づく。
お父さん。
私はどうしたらいい?
『力は大切な人を守るために使え』
そうだよね。
『お前を誇りに思う』
今の私を誇りに思ってくれる?
ふと思い出した。
父は市川学園という進学校に通っており。
英語の授業の時間に“野菊の墓”を読んで、涙したと。
私は家に引き返す。
「ただいま」
「ママ。おかえりなさい」
「ただいま。えま」
えまの頭を撫でて、キスをする。
「隆」
「ん?」
「私、読みたい本があるんだけど、1階にいてもいい?」
「いいけど。すぐメシだぞ?」
「うん。速読できるから大丈夫」
「お前。ホントすげぇよな」
私は1階に下りて、電子書籍を購入する。
何で忘れていたんだろう?
『お父さんは野菊の墓って小説が好きだったな』
私はスマホで読み始めた。
明治時代の話で、恋愛小説のようだ。
ある女性の流産による死。
その女性を好いている男性の悲しみ。
男性は老人になっても彼女のお墓で涙する。