【東京リベ】Break down【三ツ谷隆】【ドラケン】
第20章 野菊の墓
「ただいまー」
「おう。おかえり」
「あれ?えまは?」
「友達の家」
「17時には帰るってよ」
「そっか」
私は手を洗って、隆の隣にポスッと腰掛ける。
コテンと隆の肩に頭をのせた。
「どうした?疲れたか?」
「違うの。今日、刑事の直人さんに会ってきた」
「へぇ。何だって?」
「強い思いがないと難しいってさ」
「そっか」
私は今が幸せで。
タケミっちのような強い思いを持っていないかもしれない。
10月31日まで、残り10日。
「隆」
「うん?」
「久しぶりに流してきていい?」
「いいよ。気の済むまで行って来いよ」
「ありがとう」
私はスーツから私服に着替えると、父の形見に跨った。
今日は風が湿っぽい。
私の心みたいだ。
8年前。
2009年10月31日に起きた少年達による抗争。
俗に言う“血のハロウィン”。
何で場地圭介は死んだんだろう?
捏ねを使ってでも、資料や陳述書を手に入れなきゃ。
私は抗争の起きた場所も時間も知らない。
あの日、隆は起きたらいなかったから。