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呪霊に育てられた女の人生

第1章 始まり


「あれ、なんか楽しそうだね」
「乙骨くん」
 手を振りながら現れたのは乙骨くん。
「あー、またお前か」
「おかえり、どうだったデート」
「デート?」
 私の言葉に首を傾げる彼に、私もあれ? と続ける。
「里香ちゃんとデートだったんでしょ?」
「誰だよそんな事言ったの……まぁ聞かなくてもわかるけど。僕は任務に行ってたんだよ」
「あれ、そうなんだ。なんだぁ〜」
「なんだぁ〜じゃないよ。それに里香ちゃんとデートって、刀を持って行けるとこなんて任務以外にないよ」
「それもそっか」
 乙骨くんの持っている呪具、刀身が黒く染まった日本刀のようなそれは特級過呪怨霊である折本里香さんの呪力が宿っている。その力は絶大で、どんな呪いも祓ってしまうという。
以前は呪霊となった里香さんも存在していたそうだけど、今はもう傍にいないんだって悲しそうな顔で教えてくれた。
 里香さんが遺してくれた力を使って、今度こそみんなを守る為に戦うのだと決意した彼を見て、やっぱりカッコイイなと思ったのを覚えている。
「今日の任務はどうだった?」
 真希ちゃん、パンダくん、棘くんと乙骨くんと私の新一年生チームで円を組んで校庭の芝生の上に座る。
 話題は今日乙骨くんが行った任務の話だ。
「そんなに難しくはなかったよ。20分くらいで終わったし……」
 照れた様子で俯き報告してくれる。というか20分。凄い。私なんて3日くらいかかったのに(山の中で迷子になったから)
「さすが憂太だな」
「ツナマヨ!」
棘くんとパンダくんも褒めてる。凄いなぁ。
「で、どうだったんだ? 呪霊の等級は」
「えっと……」
 そう言って、少し言い淀むと彼はチラリとこちらを見た。
「……特級」
「えっ」
思わず声が出てしまった。特級案件を1人で行ったってこと?
「嘘だろ?」
「いや、ほんとだよ」
「マジかよ……。あのクソジジイ共め」
舌打ちをする真希ちゃん。
「大丈夫なのか?」
心配するパンダくんに、乙骨くんは微笑む。
「うん。僕が行けばすぐに終わるからって言われた。実際、すぐ終わったんだけど……」
「?」
 歯切れの悪い彼の言葉に、私は首を傾げた。
「呪霊自体はそこまで強くなかったんだよ。ただ……」


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