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呪霊に育てられた女の人生

第1章 始まり


-----……あぁ、またあの夢を見る。
真っ暗な闇の中、私は1人で佇んでいる。
何も見えない暗闇の中なのに不思議と自分の姿だけははっきりと見える。
そして私の周りには、無数の腕が転がっていた。
どれもこれも血塗れで、千切れた腕もあれば骨まで見えているものもあった。
そんな生々しい腕たちが私の足を掴み、引き摺ろうとする。
『来い』
声にならない声でそう言われても、私は動かない。
いくら呼ばれようと、私はここから動けないわ。
『なぜだ』
『こんなにも呼んでいるのに』
『なんで来てくれない?』
『どうして応えてくれない?』
『俺たちのことが嫌いなのか?』
違うわ。あなたたちのことは大好きよ。
だから私はここにいるの。ここにいてあなた達を見守ってる。
そしてあなた達も私を見守ってくれてるんでしょ? ずっと、ずっと……私が産まれた時から。


私に親と呼べるものはいなかった。
物心ついた時から、普通の人には見えない物を視て話していた私を両親は気味悪がっていた。それでも育ててくれたことに感謝してる。
ただ、愛情を注いで欲しかっただけ。ただそれだけだったの。
だけど、その願いは叶わなかった。
最終私を部屋に監禁する事で、ようやく彼らは落ち着きを取り戻したのだ。
食事も与えず放置されたせいで、痩せ細った体では逃げ出すことも出来ず、部屋の隅っこで膝を抱えながら夜が明けるのを待つ日々が続いた。
そんなある日のことだった。
いつものように部屋の中で過ごしていると、ねえ、と声を掛けられた。気がした。
え? と自分しか居ないはずの部屋を見渡す。でも当たり前だけど誰もいない。
気のせいか、と再び座り込んだ時、今度ははっきりと聞こえた。
「ねぇ、大丈夫?」
声の主を探すけどやっぱりどこにも見当たらない。
空耳かなと思って目を閉じたら、もう一度同じ言葉が聞こえてきた。
しかもさっきよりも近くから。もしかしたら近くに誰か居るのかもしれないと思い、おそるおそる「だぁれ?」と聞いてみた。
すると今度は、サナと返事が返ってきた。
「サナ……?」
聞き覚えのない名前。
一体誰のことだろうと思っていると、突然目の前に女の子が現れた。
まるで手品みたいに現れたその子は、黒いワンピースを着た可愛い子だった。歳の頃は私の数個上くらいだろうか。
驚いて固まっている私を見て彼女は首を傾げる。
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