第46章 このまま猫になりたい✳︎不死川さん※裏表現有
「陽の光をたっぷりと浴びてください。そうすれば、そのうち自然と元に戻ります」
そう言いながら私に微笑みかけてくれるしのぶさんはいつもの通り見とれてしまうほど綺麗な顔なのに、どことなくぎこちなさを感じなくもない。
そんなしのぶさんの前にある診察用の椅子に腰かける…基、乗っている私のサイズは、そう大きくない丸椅子に収まってしまえるほどに小さい。
なぜならば
「…にゃうぅ」
”あんな血鬼術、もう二度と食らってたまるか”
と思っていたのにも関わらず、私は性懲りもなく、今度は猫の姿になってしまったからだ。
この事が師範に知られでもしたら今度こそ私は破門だ。そうなる前に、何とか直ぐに戻れる薬を作ってもらえないかと訴えかけるも
「にゃぁにゃぁにゃにゃうぅ~」
「残念ですが、何一つ理解できません」
猫の言葉では、伝えたいことは何一つ伝わらない。
「……にゃぁ」
「そんなに落ち込まないでください。最近あの鬼の術で猫になった隊士がここを訪れることが多くてとてもうんざりしていたんです。ですがすずねさんが頸を狩ってくれたおかげでそれもなくなり一安心しました」
そう言ったしのぶさんの顔は言葉の通りとても安心しているように見え、”毛の生えた動物が嫌い”だと言ったしのぶさんの言葉に嘘がないことを証明しているようだった。
犬になった時と同様、いつもより遠くなった床を見下ろし
……こんなことになるなら救援要請なんて無視しておけばよかった…
私は、2時間前の自分の行動をただひたすら悔いた。
単独任務を終えた私は、邸に帰っておはぎでも食べようと気分上々に走っていた。そんな時、慌てた様子で”救援求ム!救援求ム!”と飛んできた鴉に従い向かった先で対敵したのが、人を猫の姿にする血鬼術が使える鬼だった。
鴉を追いかけたどり着いた先で、標的である鬼の姿を視界に入れた時から嫌な予感はしていた。
半猫人(鬼に人というのもおかしいが)の周りには、にゃんにゃんにゃんにゃん言いながらゴロゴロしている猫が4匹。それから追い詰められた表情をしながら刀を構えていた女性隊士が1人おり、鴉を飛ばしたのがその隊士であることは考えるまでもなく理解できた。