第8章 炎の音に包まれて【音好きシリーズ】※裏表現有
持って行くものはいつもと同じ。爆薬。クナイ。日輪刀。止血剤。心の準備も…出来ている。
「行きましょう。今すぐ」
天元さんは1度目を瞑り、ゆっくりと目を開け
「…わかった。頼んだぞ」
そう言った。
————
遊郭に売る為と、天元さんに化粧を施され、着物を渡された。着替えたそれは、私が持っている着物よりもはるかに上等なもので気後れしてしまいそうな程だった。
着替えを終え、天元さんの元に向かうと
「…馬子にも衣装だな」
そう言いながら天元さんは珍しく優しい笑みを私に向けた。
「準備完了です。さあ、行きましょう」
そう言って立ち上がる私に
「まぁ待て。慌てんな。もうすぐ来る」
「来るって…誰がです?」
「そりゃあもちもろん…」
その時だ、
「失礼する!」
玄関の方から聞こえてきたのは、
「この声…っ!」
耳に酷く心地の良い声。
私は慌てて玄関に向かった。
「炎柱様!」
「先ほど振りだな。…身体は大丈夫か?」
その言葉に炎柱様との情事が思い出され、急激に頬に熱が集まった。
「…大丈夫…です」
「それは良かった。それにしても…先程とはまた感じが違い素敵だ!その姿で売られて行くと思うと複雑な気持ちになるがな!」
そう言って炎柱様はわはは!と笑った。
私だったら、恋仲になったばかりの相手が、任務のためとは言えそういった場所に行くと聞いたらそんな風に笑っていられない。
「炎柱様は、器が広いですね」
「む?そうでもない」
そう言いながら炎柱様は私の腕を掴み、グッと引き寄せられ
ちぅ
と優しく口付けられる。
気持ちいい。
程なくして炎柱様の唇が離れていき、それでもかなりの至近距離を保ちながら
「絶対に、無理はしないように」
そう囁いた。
「…はい。帰ってきたら、会いに行っても良いですか?」
私がそう問うと、炎柱様は少し考える素振りを見せた後
「うむ!待っている!」
先程よりも、若干大きな声でそう応えた。
「何か、隠していますね?」
そう私が問うと、
「知らん!」
炎柱様が目を逸らしながらそう言うものだから
「ふふ…っ下手な嘘」
思わず笑ってしまった。
私は炎柱様に見送られ
欲望まみれる夜の街
遊郭
へと出発した。
必ず貴方のそばに帰ってくるよ。
-続-