第44章 雨上がり種植えつけられる✳︎煉獄さん※裏表現有
私はひとり、炎柱邸の門の前で右往左往していた。
その理由は
「…蜜璃ちゃん…何があったんだろう…」
杏寿郎さんから送られてきた
”血鬼術にかかった甘露寺をしばらくうちで預かることになった。すまないが来客用の布団を1組出しておいてくれ”
という、随分と簡潔な内容の(簡潔すぎていまいち状況がわかりません!)文を読んだからである。
…酷い怪我…とかかな…?…いやでも…酷い怪我だったらわざわざここに来るよりも蝶屋敷の方で療養するだろうし…あぁもう!杏寿郎さんったら言葉が足らなすぎます…!
そんなことを考えながら頭を抱えたその時
「すずね!」
愛する夫の声が、私の名を呼んだ。
私は頭を抱えていた手を離し
「杏寿郎さん!」
声の聞こえてきた方へと視線を移した。その時
え?…杏寿郎さん…子どもを抱っこしてる?あれは…
「……蜜璃ちゃん!?!?」
視界に飛び込んできたのは、1歳半から2歳位の年齢だと思われる、桜餅色の髪の毛の持ち主である蜜璃ちゃんだった。
「…っえぇぇぇぇぇぇぇえ!?!?!?」
私は驚きのあまり、大声を出してしまった。
すると
「…う…うわぁぁぁん!!!」
杏寿郎さんの腕に抱かれていた蜜璃ちゃんを驚かせてしまったようで
「わはは!前が見えん!」
蜜璃ちゃんは、すぐそこにあった杏寿郎さんの顔に縋りつくようにしながら泣き出してしまい、そのかわいいふにふにの腕が、杏寿郎さんの視界を覆い隠していた。
慌てて自らのうるさい口を黙らるも
…あんな小さな蜜璃ちゃんの前でなんて大声を…!
依然として杏寿郎さんの側頭部に張り付き涙を流す蜜璃ちゃんの姿に、とんでもない罪悪感が胸の中を覆っていく。
私は泣き続ける、小さくてかわいい蜜璃ちゃんにゆっくりと近づいていくと
「大きな声を出しちゃってごめんなさい。私は、煉獄すずねと申します。あなたが今抱き着いている、とってもかっこいいお兄さんの妻です」
歩調以上にゆっくりと、それから穏やかな声色で、ポロポロと泣き続けている蜜璃ちゃんに声を掛けた。