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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第43章 水着と下着、その差はいかなるものか✳︎【暖和】※微裏有


そんな様子を、杏寿郎さんの腕に抱きつきながら見送る私は、それはもう嫌な女に違いない。

けれども指輪をしていようと、或いは杏寿郎さん自身が既婚者だと伝えても、そんなの気にしないと引き下がらない人をたくさん見てきた私としては、こうして意地悪な行動を取ってしまうことも理解して欲しいと思うのが本音だ。

自分の意地の悪い行動に、ため息をこぼしそうになったその時


「…っ…?」


杏寿郎さんが、右腕に引っ付いたままの私を更にくっつけるように逆の手で私の身体を引き寄せてきた。

どうしたのかと思い、斜め上にある杏寿郎さんの顔を仰ぎ見てみると


「……杏寿郎…さん?」


他者から見ればいつもとそう変わりない表情に見えなくもないが、私の目から見れば明らかに”不機嫌”もしくは”怒っている”それだった。

その表情に、さっきの女性に対する私のあからさまな行動が、杏寿郎さんにそんな顔をさせてしまったのだろうかと不安が過ぎる。


……どうしよう…呆れられちゃったかな…?


そんなことを考えている間に、杏寿郎さんに半ば押されるように連れていかれ、かわいらしいポップ体の文字で

”お風呂につかる前に身体を流してください”

と、書かれている看板が立つ場所に辿り着いた。

杏寿郎さんは私の背に添えていた左手を離し、チョロチョロと蛇口のようなところから流れ出たお湯がたまっている大きな樽に浮かんだ手桶をさっと掴んだ。それから


じゃーっ


と、私の肩から足先にかけ無言でお湯をかけていく。

そうされている間も杏寿郎さんの表情は相変わらずで、周りにいる人たちは楽しそうに友達やパートナーと話しているのにも関わらず、私と杏寿郎さんの間には微妙な空気が流れ続けていた。

かけ湯が私の胸元を流れたその時


「…む」


杏寿郎さんは一時停止ボタンでも押されたかのようにその動きを止め、小さく唸った。それから先ほどよりもその動きを速め、私の身体にどんどんかけ湯を流していく。

私の身体を流し終えた杏寿郎さんは、次は自分の身体にかけ湯を流し、それを終えると再び私の背中に手を添え歩きだした。

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