第43章 水着と下着、その差はいかなるものか✳︎【暖和】※微裏有
私は杏寿郎さんからのその問いに
「……内緒です」
悪戯を仕掛ける子どものような笑みを浮かべ、持っていた鞄を背に隠した。そして、キョトンとしている杏寿郎さんの元に歩み寄ると
「露天風呂に行ってからのお楽しみです!さ!早く行きましょう」
そう言って太くて逞しい腕に絡みついた。そんな私の行動に、杏寿郎さんはとても嬉しそうに微笑み、私の側頭部辺りに頬擦りをした後
「そうだな!」
部屋の入り口の方へと歩き始めた。
天空露天風呂の、男女別になっている入り口で杏寿郎さんと一旦別れ、私は更衣室で急ぎ着替えていた。
……あの杏寿郎さんのことだもん…1人でポツンと立ってたりなんかしたら、すぐに女の人に声をかけられちゃう…!
水着姿の女性が、その鍛え抜かれた身体を惜しげもなく晒す杏寿郎さんに迫っている姿を想像すると、想像だけにも関わらず、ドス黒い何かが胸に込み上げて来るようだった。
鞄の下にしまっていた袋を取り出し、先輩に選んでもらった水着を取り出す。それから大急ぎで服と下着を脱ぎ、インナーショーツに足を潜らせた。その次は、両端に黒くて細い紐のようなリボンがつき、水着の上から半分ほどまでヒラリとレースがあしらわれた白いショーツにも足を通した。
下が済んだら次は上だ。自分では絶対選ばない、ホルターネックになっている三角ビキニで胸を覆う。首の後ろで結ぶ紐は、ショーツと同じように黒いそれで、口コミにも書かれていたが白と黒のコントラストが可愛らしく、尚且つセクシーに見える。そして何よりも
……すごい…普段はささやかな私の谷間が…こんなにも……!
"盛れる"と言っていた先輩の言葉通り、ショーツと同じようにレースのあしらわらた胸元は、自分でも感心してしまうほどの出来栄えだった。
20代半ばにもなって、これはちょっと恥ずかしいかなと思う部分もあったが、ここまできてしまえばもう後戻りは出来ない。
普段はおろしている髪の毛をクルリとひねり、カナエさんからもらった蝶々の姿を模したクリップで一纏めにした私は
…よし!準備完了!
最後に自分の姿を鏡で確認し、フェイスタオル1枚と、ロッカーの鍵だけを持って更衣室を後にした。