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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第42章 推すのに忙しい私を押してこないで*煉獄さん


ぎょろりとした特徴的な色の瞳は、草陰にしゃがみこんでいる私を真っすぐと捉えている。


…しまった!私としたことが、夢中になりすぎて煉獄様が近づいてきていることに気が付かなかった…!


私は慌てて手に持っていた双眼鏡を煉獄様から見えないように隠し


「お…お久しぶりです煉獄様!」

「そうだな!」


焦る気持ちを隠すように、お店の接客で培った愛想笑いを浮かべて見せた。けれどもその愛想笑いは


「だが俺個人の感覚としてはあまり久しいとは思わない」


煉獄様のその言葉で早急に崩されてしまう。嫌な予感からスイと目をそらし


「…え?どうしてでしょう?」


何にもわかっていませんと言わんばかりにそう尋ねてみた。すると返ってきた言葉は


「俺は1か月ほど前にも、君がこうして不審な行動をとっている姿を目にしている。任務に向かう途中だった故、今回のように声はかけなかったがな!」


”もしかして”と懸念していた通りのそれで


……やっぱり見られてたんだ…どうしよう…!!!


私の身体は血の気が抜けたようにサーッと冷たくなっていった。

笑顔を張り付けたまま固まってしまった私に


「して。君はこんなところに隠れて一体何をしているのだろうか?事の次第によっては、君の主人である甘露寺に報告せねばならない」


煉獄様は私にとって”死刑宣告”に近いお言葉を突き付けてきた。


「…っ申し訳ありません!それだけは…蜜璃様に言うのだけはご勘弁をぉぉぉ!!!」


私は煉獄様の足元までガサガサと虫のごとく移動し、そのままの流れで地面におでこを擦りつけながら全力の土下座謝罪をした。


「俺に対し、そのように謝る必要はない。ほら。顔を上げるといい」

「…うぅぅ」


私は煉獄様の言葉に従い恐る恐る顔を顔を上げた。すると、目が合った煉獄様の瞳がフッと緩く細められ


「額が土まみれだな!」


ぱっぱと私の額に付着していると思われる土を、指先で優しく払ってくれた。

そんな優しさ溢れる表情と行動に


「……やっぱり、煉獄様もいい!!!」

「む?」


私の心が大きく揺らいだ。


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