第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有
部屋に入り、通勤用のバックを所定の場所に半ば放るように置いた。
そのまま1DKの部屋の真ん中にある丸テーブルに開いたまま置いていた大学生の頃からの使い古しのノートパソコンを開き、文字書き用のソフトを起動すると
退職届
と、退職届セットのお手本に習い文字を打っていく。
「随分と速ェ仕事ぶりだなァ」
実弥さんがいつの間に淹れてくれたのかホットココアを片手に私の向かい側に腰かけた。
「ありがとうございます!善は急げです!」
レポート作成で無駄に鍛え抜かれたタイピングスキルで、あっという間に退職届を入力し終えた私は、念のためにそれを一旦保存する。
「あとはプリントアウトすればばっちりです!」
そして先ほど購入した退職届セットの中からプリント用の用紙を取り出し、部屋のすみっこに置いてあるプリンターにセットした。
それからパソコンの”印刷”ボタンをクリックすると、独特な機械音がした後、先ほど私が打った文面が映し出された紙が排出された。
手に取った退職届を実弥さんのところまで持って行き
「完成しましたぁ!!!」
「んなことしなくても見えてらァ」
実弥さんの顔の前にズイっと見せつけるように広げた。
「完成したんなら封筒にしまって通勤バックにでもしまっておけェ」
「はい」
私は実弥さんの言葉の通り、先ほどの退職届セットから封筒を取り出すと、プリントアウトした紙を三つ折りにしその中に入れた。
封筒の口を閉じ、通勤バッグに常に入っているクリアファイルにさっと入れた。私が通勤バッグのファスナーを締め終えたその時
「…本当にいいんだな?」
両腕を組みながら胡坐をかき、ジッと私の意思を確認するような鋭い視線をした実弥さんにそう尋ねられた。
「……」
私はそんな実弥さんの背中の方へと周り
「愚問です」
後ろからギュッと抱き着いた。それから実弥さんの左耳に唇を寄せると
「私のこと、早くもらってくださいね?」
甘えた声で囁きかける。すると私の後頭部に実弥さんの左手が当てられ
「…ん…」
グイッと顔の角度を変えられ、互いの唇が重なりあった。