第41章 今世の私も、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※微裏有
「…若い身で未亡人なんてもったいないからうちの息子はどうだとか、親戚はどうだとか、…しまいにゃ本人が乗り込んできたりとかあったんだってなァ」
「…あ、なる程それのことですか。宇髄様に聞いたんですか?」
「……そうだァ」
確かにそんなこともあった。買い物先で仲良くなった八百屋のおばさん、そしてそのお客、更にはどこから聞きつけてきたのかわからない人が、”もったいないもったいない”とよくわからない理屈を並べ、嫁いでくるように言われた記憶が確かにある。
付き合いがあるからとあまり無下にすることも出来ず
”もう面倒くさいです!宇髄様追っ払ってください!”
と何度も愚痴をこぼさせてもらった。
「あれはですね、物凄っくストレスでした!夫以外のものになるつもりはないと何度も何度も説明してるのに、しばらくたったら何事もなかったかのようにまた来るんですよ?最終的には爽籟としろみが私の敵だと認識をして追っ払ってくれるようになったからよかったですけど」
「…しろみってなんだァ?」
「壱弥が拾ってきた犬の名前で私の大事なかつての家族です」
「ネーミングセンスねぇなァ」
「そんな事ないです!実弥さんから一文字もらったんですから」
ニッコリと笑う私に対し
「…そうかよォ」
実弥さんは何故か少しげんなりしているように見えた。
「まぁどちらにしろ、私は実弥さんに約束した通り、実弥さん以外の誰のものになるつもりはなかったので、ただ迷惑だっただけです」
寂しさを全く感じなかったと言えばそうじゃない。それでも、宇髄様に禰󠄀豆子ちゃん、アオイさん…他にも私のことを気にかけてくれる人はたくさんいたし、爽籟やしろみの子孫は、まるでそうすることが当たり前のようにずっと私の側にいてくれた。
何よりも実弥さんと私が夫婦であったという証、壱弥がいてくれた。
だからこそふと実弥さんの温もりが恋しくなった時も、前を向いて自分の人生を歩み続けることが出来た。
「私は今も昔も実弥さん一筋です……あ、でも記憶が戻る以前のことは勘弁してください」
ニヘラと実弥さんに笑いかけた私に
「…お前はやっぱりいい女だよ」
実弥さんは先ほどとは異なり、酷く優し気に目を細め私に笑いかけてくれた。