第40章 欲しかったのはそっちじゃない✳︎無一郎君
…待って…待って待って…!
私が心の中で呟いたそれらの言葉は、私の手を引き先を歩く時透君の背中に投げかけたものなのか、それとも未だかつてないほど胸を騒がせている自分自身に投げかけたものなのか…自分でも分からなかった。
「料理部の活動って火曜と木曜だけでしょ?今日からそれ以外の日は、僕と一緒に帰るからね」
そう言いながら時透君は私の方を振り返ることなくどんどん階段を降りていく。
「…でも時透君の家って、私と方面違うんじゃない?それに、いつもお兄さんと一緒に帰ってなかったっけ?」
「有一郎なんて家に帰ってもずっと一緒なんだから学校からの帰りくらい別々だって構わないし」
「…でも…私も料理部の子たちと一緒に帰ってるし…」
「大丈夫。僕と一緒に帰ることになったって言えば、喜んで送り出してくれると思うよ?」
「……そうなの?」
みんな一体私と時透君の関係についてどんな認識をしていたのか。色恋沙汰に無頓着だった私にはいまいち分からなかった。
そして
"え…?見てよ。時透君とあの女の子、手繋いで歩いない!?"
"うっそ!?あの子…料理部の2年の人だっけ?"
女の子たちがそんなふうに言っているのを全く気にする様子のない時透君は、私の手をぎゅっと握りしめたまま廊下を突き進んでいく。
…困ったなぁ…モテモテの時透君と手を繋いで廊下なんて歩いてたら…明日には学校中の噂になってるかもしれない
そんな考えが浮かんできたものの、繋がれた手を振り解こうとは不思議と思わなかった。
後々考えると
私はこの時から既に
時透君に惹かれていたんだと思う
"職員室に手を繋ぎながら来るとは一体何を考えている"
当たり前のよう手を繋いだまま職員室に入って行った時透君に(私は握り返してないから無罪だもん)冨岡先生が顰めっ面でそう言うまで後30秒。
-to be continue…?-