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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第37章 大きな背中を抱きしめさせて【暖和】


「その羽織はすずねのもの。すずねがそう言うのであれば何も言うまい」

「…っありがとうございます!」

「愛する恋人が、俺のお古の「お古なんて言わないでください!」…俺の着ていた羽織を大切にしてくれるのは些か照れ臭いが嬉しいものがある」


杏寿郎さんはそう言って私の左頬をその大きな右手で撫でてくれた。私はそれにすり寄るようにさらに頬を寄せる。すると杏寿郎さんは眉の端を下げ、とても穏やかな笑みを私へと向けてくれた。


けれども、フッとその表情を真剣なそれへと変え


「だが師範として、君の安全管理をするのも役割の一つ。今後一度でもその羽織が邪魔そうだと俺が感じた場合、即手直しをさせる。いいな?」


私の目をじっと見据えながらそう言った。


「…はい。約束します」


絶対にそうならないように気を付けよう


そう思いながら私は師範である杏寿郎さんに返事をしたのだった。


「うむ!約束だ!では、もう一度頼む!」


杏寿郎さんはそう言うと身体の正面を再び中庭の方へと向け、私に背を向けてきた。


「…頼む…?頼むって…何をですか?」


脈絡のない杏寿郎さんの言葉に戸惑っていると


「…もう一度…先ほどのようにしてもらいたいのだが…駄目だろうか?」


杏寿郎さんがチラリと私の様子を窺うように振り返りながらそう尋ねてきた。


…っ…杏寿郎さんが…かわいい…!


あまりにもかわいらしい杏寿郎さんの行動に、胸を撃ち抜かれ固まってしまった私だが


「…はい…たくさんしてあげますよ」


愛する杏寿郎さんの要望に応えようと、半ば頭をかき抱くように杏寿郎さんに身を寄せた。












そのまま私と杏寿郎さんは


”邪魔をしてしまいすみません…でも…あの…昼餉の準備が…済んでしまっているのですが…”


千寿郎さんが物凄く申し訳なさそうな様子で声を掛けてくるまでくっ付き続けた。

そんな千寿郎さんの様子に、自分が何のために縁側に来たのかようやく思い出した私は、ただひたすら千寿郎さんに謝り続ける他なかった。







-完-
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