第36章 これから先の未来、ずっと一緒に✳︎不死川さん
向日葵畑の女性にお礼を述べ、夢見心地のまま車へと乗り込み帰路へと着いた。
そのまま休むことなく車を走らせ、私の住むアパートがある街に着き、思っていた通り夕食を共にした。それから私と実弥さんは、今日の下見デート(私をあそこに連れてくための嘘だったらしい)を終えるため、今朝、実弥さんの車に乗り込んだ場所に戻ってきた。
「着いたぜェ」
ハザードをたき、車を道路脇に停めた実弥さんが言った。
「……はい」
そう返事はしたものの
…まだ…離れたくない
どうしても、このまま実弥さんとさよならする気にはなれず、シートベルトを外す気が起きない。
「邪魔になっちまうだろ…早く降りろォ」
実弥さんの言う通り、そこまで交通量が多くない道とは言え、いつまでもこうしているわけにはいかない。それでも、どうにも離れがたく
「…家に…寄ってって…?」
右手をすっと伸ばし、実弥さんの手に重ねながらそうねだる。
「…っ…」
すると実弥さんは珍しく私の言葉に押し黙った。
…反応は悪くない…このまま攻めれば何とか!
今まで何度か家に上がって欲しいとねだった事があったが、いつも即答で断られていた。でも今日は違う。実弥さんの心は確実に揺れている。
私は重ねていた手をもぞもぞと動かし、実弥さんの指と私の指を絡めるように握り込むと
「…ね?…ゴム…せっかく準備してあるのに全然減らなくて…寂しいの」
わざと甘ぁい声を出し、ぎゅっと手を握る力を強くした。実弥さんはそんな私の行動に
はぁぁぁ
と、長い溜息を吐いた後
「…んっとに…お前は俺を誘惑するのがうめぇよ」
右手だけで器用に車を発進させ
「覚悟しとけよォ」
そう呟きながら最寄りの有料駐車場へと車を走らせたのだった。
”プロポーズと言えば薔薇なのにどうして向日葵にしたんですか?”
そう尋ねると
”…お前に…似てると思って…”
実弥さんは腕で顔を隠すようにしながらそう答えてくれた。けれども、耳の縁が赤くなっているのが私にはしっかりと見えてしまっており
”…っ好き!大好き!かわいい私の実弥さぁん!”
”ばっ…おまっ…んな格好で覆いかぶさってくんなァ!”
私の実弥さんへの愛情メーターは最大値を振り切り壊れてしまったのだった。
-完-