第36章 これから先の未来、ずっと一緒に✳︎不死川さん
”着いたら連絡入れるから部屋で待ってろ”
実弥さんからそんなメッセージが来ていたが、1分でも1秒でも早く会いたくて、私はアパートの外で実弥さんのお迎えを待っていた。
実弥さんと再会を果たし前世の記憶を取り戻してから私の毎日は、まるで花が咲いたように彩り、何をしていても楽しかった。それはもう浮かれすぎて友達に心配されてしまうほどに。
そして今日は実弥さんと初めての遠出。浮かれるなというほうが無理だ。何日も前から何を着ていこうか数えきれないほど鏡の前で自分とにらめっこをし、最終的に大人っぽさとカジュアルさをうまく織り交ぜたワンピース姿に落ち着いた。
かわいいって…言ってくれるかなぁ
そんな淡い期待を抱きながら鏡でお化粧の最終チェックしていると、実弥さんの車、所謂ファミリーカー、ミニバンタイプの車がすぐそこの信号に停まっているのが目に入った。
っ来た!…あぁ…ハンドルを握ってる実弥さんって…どうしてあんなにも格好いいの…?
信号が青に変わり、徐々に近づいてくるその姿をただうっとりと見つめる。ハザードをたいた実弥さんの車が私の前で停まり、往来の邪魔にならないよう急いで左右を確認してから助手席のほうへと周りドアを開け、素早く乗り込んだ。
バタン
大きな音を立てないように気を付けながらドアを閉め、シートベルトを着け終えた私に
「遅くなって悪ィ」
実弥さんは開口一番謝ってきた。
「おはようございます実弥さん。全然待っていませんし、例え待ったとしても実弥さんが来るのを待っているの時間は全く苦痛ではないので問題ありません!」
「就也のやつが一緒に行くってごねてよォ…説得するのに手間取った」
実弥さんは、その”手間取った”というやり取りを思い出しているのか、珍しく疲れた表情を見せた。私はそんな実弥さんに
「なんだ…連れて来てくれてよかったのに。海浜公園なら就也君だって楽しめたんじゃないですか?」
そう言いながら近くの自販機で買っておいたブラックコーヒーを手渡した。実弥さんは小さな声で”サンキュ”と呟くと、缶コーヒーを受け取り蓋を開けた。そしてそれを2.3口飲んだ後
「…就也だけ連れて来るわけにはいかねェだろォ?」
そう言ってふぅぅぅと、長めのため息を一つ吐いた。