第28章 雨降って愛深まる✳︎煉獄さん※裏表現有
目が覚めると、外は既に夕焼け空になっていた。
…大変!夕食の準備をしないと!
そう思い起きあがろうとするも、身体のあちらこちらが痛く、はっきり言って夕食を作れそうな気はしない。ふと頭に蘇ってくる、先ほどまでの杏寿郎様との激しい情事。
…あんなにも…凄いなんて…これから毎回あんな風に抱かれるのであれば…もう少し体力をつけないと…!
何も身に纏わず、汗やら何やらで汚れていたはずの身体はすっかりと綺麗にされており、夜着を身に纏っていた。
…杏寿郎様が…してくれたのかな?…恥ずかしいけど…嬉しい
そんなことを考えていると、スッと襖が開き
「起きたのか」
「…っ…はい…すっかり寝入ってしまっていたようで…申し訳ありません」
「原因は俺だろう。謝る必要はない」
杏寿郎様が私の隣に腰掛けた。
「身体の具合はどうだ?」
その言葉に、先程よりも鮮明に杏寿郎様との激しい行為が思い出され
ボッ
と、頬が急激に熱を帯びた。
「…は…はい。…所々…痛くはありますが…平気…です…」
「それは良かった」
杏寿郎様は私の左頬をその右手でゆるゆると撫で、甘く優しい目つきで私のことを見つめてくる。
杏寿郎様の口調は、事が起こる以前に比べかなり砕けたそれになっており、なんだか互いの距離が縮まったことを証明しているようでたまらなく嬉しくなった。
「…杏寿郎様…」
「なんだ?」
「…また…すずねと…呼んではくださいませんか…?」
行為の最中、杏寿郎様はなんども''すずねさん"ではなく"すずねと私を呼んでくれていた。
私のそんな要求に、杏寿郎様はキョトンとした表情を見せた後、眉の端を下げ
「…すずね…」
私の名を、何かとても大事な事を言うような口調で呼んだ。
「…はい!杏寿郎様!」
嬉しくて、心が喜び躍るようだった。
「では、すずねも、俺のことを杏寿郎と…そう呼んではくれないだろうか?」
「…え…?」
杏寿郎様を…"杏寿郎"…と、呼ぶ?
"杏寿郎"
頭の中でそれを試してみるも、どうにも恥ずかしくて出来そうにない。