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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第6章 その音を守るよ-前編-【音好きシリーズ】


血気盛んで羨ましいと思った。

私はいつもどこか冷めている。冷静に事を分析する能力には長けているかもしれない。でも、私はそんな自分が堪らなく嫌いだ。私も炭治郎くんや、伊之助くんのように、熱い心のまま、誰かの為に何かをしたい。


そんな事を考えていると、

「柏木、ぼんやりとしている暇はないぞ」

耳心地が良い

そう思ってしまった自分の心を、私は再び見て見ぬ振りをする。

あぁ。あんなに苦手で、怖いとすら思っていたのにどうして。

そんな事を考えているとはおくびにも出さず、日輪刀を構え触手のような気色悪い肉塊を睨み付けながら

「遅いお目覚めですね。炎柱様、意外と寝起きが悪いんですね」

と相変わらず可愛くない言葉が口をついて出る。

「そんな事はない。俺は寝起きがとてもいい方だ」

そう言う炎柱様は、慌てた様子もなく、徐に私とは逆方向に身体を向けた。

「よもやよもや…うたた寝している間にこんな事態になっていようとは。柱として不甲斐なし」

怪しく蠢く肉塊の中を悠然と進む炎柱様の後ろ姿は

「穴があったら……入りたいっ!!!」

酷く美しいと感じた。













私にも帰りたい場所と思える場所が出来た。


でもそこは本来私がいるべき場所じゃない。


天元さんと雛鶴さん、マキオさん、須磨さんは家族だけど


私はそうじゃない。


でも。


そんな愛し合う4人のそばにいる事で


いつか私もそんな相手と出会える日が来ればいい。


そんな風に思えるようになった。


でもそうなるのは到底無理だから


せめて貴方を


貴方を心から大切に思う人の元へ


私がきっと帰してあげる。


例え自分がそこで死んだとしても。


愛する人のせいで死んだ母とは違う。


そうだ。


私はずっと


"愛する人の為に死にたい"


そう思っていたんだ。


まぁ、まだ私のこの気持ちは


"愛"なんて言えるほど


大きくはないんだけどね。


「雷の呼吸参ノ型…聚蚊成雷!」


炎柱様が去って行った逆の方向へ、私も技を放ちながら進んで行く。












-続-
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