第6章 その音を守るよ-前編-【音好きシリーズ】
「すずね、お前にお館様より特別任務だ」
「あ、はい、わかりました。どうせまた炎柱様と一緒でしょう?」
いつもながらのその言い回しに、特別任務の内容を聞く前に、炎柱様と一緒だろうなということは察しがついた。
「なんだぁ?今回は随分と聞き分けが良いじゃねぇか。さては煉獄となんかあったか?」
ニヤニヤと私を見ながら笑う天元さんに冷めた視線を送る。
「そんなんじゃありません。…でも、また一緒に任務につけるのは嬉しいと思っています」
その言葉に天元さんは珍しくキョトンとした表情を見せた。
「…なんだよ。やっぱりらこの間の任務で煉獄と何かあったのか?」
先程とは違い真面目な雰囲気でそう尋ねてきた天元さんに、私は前回の任務で炎柱様と2人で河原でおにぎりを食べたことを話した。
「すずねはもう炎柱様のことが苦手じゃなくなったの?」
その場に居合わせた雛鶴さんがほんの少し首を傾げながら私に問うた。
「はい。この間の任務で、炎柱様は…相変わらず身体も声も大きいけど…心優しくて強い方だということがわかりました。だから驚くことはあっても…怖いとか苦手とか思うことはもうありません」
「全ては俺様の派手にありがたい話のお陰だな!」
あながち間違いではない。けれどもなんだか素直に認めるのはほんの少し恥ずかしく、
「そう思いたいのなら…お好きにどうぞ」
と相変わらず可愛げのない言葉が口をついて出た。
「ったく相変わらず素直じゃないやつ。嫁たちには素直なくせに」
「私達からすればすずねは可愛くて仕方がないくらいですけど」
あぁ。そう言って微笑む雛鶴さんの方がよっぽど可愛い…というよりは綺麗で素敵だ。
「ところで天元さん」
「なんだよ。俺様に聞きたいことでもあんのか?」
「…天元さんは炎柱様の事を"馬鹿正直でいいやつ"と言っていましたが、天元さんから見た炎柱様は他にどんな印象ですか?」
私のその問いに天元さんは再びあのニヤニヤ顔を浮かべる。
「天元様。そんな顔をしていると、またすずねがお臍を曲げてしまいますよ」
「あ!雛鶴さんまで!私を子ども扱いしないで下さい!」
「お前は男関係に関しては子どもと変わんなぇだろ」
「…それはそうなんですが…」
「まぁそれは置いとくとして、煉獄だろう?そうだなぁ…」