第25章 私をあなたの特別に✳︎宇髄さん
私は今日、所謂マッチングアプリでマッチングした男性と初めて直接会う。
【白のパーカーでフード被ってる男性】
相手を見つける目印として与えられたその情報に該当する相手は、待ち合わせとして選んだ駅前広場に1人しかいなかった。
…いやでも…あの人?いやいや…あれはないよね?だって…なんか…オーラあり過ぎるし。あんな人、わざわざアプリに登録しなくっても…あんな風に道に佇んでるだけで向こうから寄ってくるはずだもん。
念の為、登録しているマッチングアプリを起動し、やり取りしたメッセージを開きその内容を確認しようとした。すると丁度
"もう着いてる。羊雲はまだ?"
とメッセージが送られてきた。
…やっぱり、あの人で…合ってるんだよね。
顔を上げ、待ち合わせ相手の方を見たその時
パチッ
見事に視線がかち合ってしまった。
不味い。
なぜか私はそんな風に思っていた。その後、視線が私が待ち合わせ相手であることの目印、黒のショルダーバックに付いている両手にチキンを持った頭に骨の刺さったチキンのキーホルダーへと向けられた。
小ぎれいなショルダーバックに、不釣り合いなチキンのキーホルダーをつけている人間はそう滅多にいるもんじゃない。私を”羊雲”と断定した待ち合わせ相手、”祭りの神”はまっすぐと私に向け歩いてくる。
「なんだぁ。どんな奴が来ると思ったらずいぶんと地味な女が来たもんだなぁ」
開口一番そう言い放ってきた祭りの神に
「…はい?」
私がそう言ってしまうことは仕方のないことだと思う。メッセージのやり取りをしているときは、趣味も合うし、面白いし、初めて”会ってみるのも悪くないかも”と思えたが。
やっぱり、来るんじゃなかった。
そう思い
「…お気に召さないようであれば、帰りますので遠慮なく言ってください」
私がそう言うと
「いや、帰んねぇし。んなことより早く行かねえと混んじまうぜ。いくぞ」
「え!?…っちょ…」
そう言って祭りの神はなんの躊躇もなく、今日初めて会った私の肩を抱き、歩き始めた。