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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第24章 私の全て、余す事なくもらってください✳︎不死川さん※裏表現有


あの日実弥さんに手を引かれ旅に出た日から1か月程の時が経っていた。使っても使っても使いきれないほどの大金を輝利哉様から頂くことが出来たので、しばらくの間は働かず、今まで送ってくることが出来なかったのんびりとした時間を過ごそうと温泉巡りに勤しんでいる。

はじめは恥ずかしくて不死川様としか呼ぶことが出来なかったが(あれだけ好き好き平気で言って迫ってきたきたくせに名前が呼べないとは変な奴だと実弥さんに酷く呆れられた)、今ではすっかり実弥さんと呼ぶのが当たり前になってしまった。


私、こんなに幸せでいいのかな?


大好きな温泉。おいしい食べ物。愛してやまない実弥さんが毎日隣にいてくれる。実弥さんを幸せにするのが目的だった筈なのに、すっかり自分が幸せでいっぱいになっていた。



けれども、たった一つ。
たった一つだけ不満なことがあった。







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「おやすみなさい実弥さん」

「あぁ」

「…おやすみの口づけをしても良いですか?」

「…毎日毎日、仕方のねえやつだな」


そう言うと私に背中を向けるようにして眠っていた実弥さんが、身体をもぞもぞと動かし、私の方を向いてくれた。

いつも通り私がその頬を両手で掴み、

ちぅ

触れるだけの口づけを落す。




それでお終い。
いつもお終い。



スッと実弥さんの顔が離れていき


「…これで満足したろォ?さっさと寝ろ」


そう言うと再びもぞもぞと動き、背中を向けられてしまう。


「……おやすみなさい」


天井を見れば灯りの消えた電球が見え、何故か無性に虚しさを感じる。

隣から確かに大好きな実弥さんの温もりを感じるのに。



今日も…ダメなのかな?



私は今日も悶々とした気持ちで一人天井とにらめっこする他ない。


さっさと寝てしまおう。


目を瞑り、コロリと身体を実弥さんの方へ向け、実弥さんが身に着けている浴衣を右手でぎゅっと握った。


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