第4章 騒音再び【音好きシリーズ】
おにぎりを全て食べ終えた炎柱様と私は河原から立ち上がり、向かい合った。
「では俺はこのまま見回りに行く。君は帰って休むと良い」
「はい。お気をつけて」
そう言ったのにも関わらず、炎柱様は私の顔をじーっと見ており、動き出す様子がない。
その眼力でそんなに見られると…顔に穴が開きそう。
「…どうかしました?」
私がそう問いかけても、炎柱様は何も答えてはくれずただただ私を見続けている。
極めて居心地が悪い。
「…見廻り、行かないんですか?」
「行く」
「だったら早く行った方いいですよ。間もなく日が暮れます」
炎柱様はフッと空を見上げ
「そうだな」
と静かに言った。なのにも関わらずいまだに動き出す気配がない。本来であれば見送る立場だが、炎柱様がいつまで経っても動き出さないのだから仕方ない。
「それでは。失礼します」
頭を下げ、その場を去ろうとした私の頭に
ポンッ
とその大きな手が置かれた。
…何?この状況。
炎柱様は私の頭に置いた手を優しく動かし、私の頭を優しく撫でているようだった。
「…あの…なんです?」
炎柱様はニコリと私に微笑みかけ
「野良猫を手懐けた気分だ!」
わはは!
と、笑っている。
「………は?」
「では、気をつけて帰るように」
そう言って炎柱様は一瞬でいなくなった。
「…やっぱり…苦手かも」
口から出たそんな言葉に反し、私の頬はほんの少し緩んでいた。
炎柱様と共に列車の任務に就くまで後2週間。
-続-