第21章 おにぎり大合戦【さつまいもvs鮭】
「…冨岡…?冨岡とは、水柱の冨岡の事か?」
私は師範からのその問いに、
「はい!その通りです」
間髪なく答える。
初対面のあの日から、何やらちょこちょこ冨岡さんとお会いする機会が増えた私は、何度か鮭のおにぎりを差し入れていた。冨岡様は、会うたびに
元気か?
変わりはないか?
と私のことを気遣うような優しい言葉と、
柏木のおにぎりは美味い
また握って欲しい
おにぎりの感想や、次の催促をしてもらえるようになった。そんな冨岡さんのことを思い出しながら
きゅっきゅっ
と大きな鮭を入れたおにぎりを握り、
「冨岡さん、私のおにぎりをとっても気に入ってくれたみたいなんです!嬉しそうに食べてもらえるのが嬉しくて、気がついたら鮭のおにぎりばかりを握るようになっていました」
パッとおにぎりから師範へと顔を向けた。
「……師範?どうか…しましたか?」
そんな私の手にあるおにぎりを、師範はじーっと半ば睨むような顔で見ていた。
…師範…どうしたのかな?あんまり…見たことのない顔をしているけど…
何か気がつかない間に、師範を不快にさせるようなことを言ってしまっただろうかと不安になった私は、その顔を見上げながら
「…師範…?」
再び師範に声をかけた。私の二度目の問いかけに、今度はピクリと反応を示した師範は、私の手元のおにぎりから、私へと視線を移し、ぱっとその猛禽類のような目と、私の目が合う。
「柏木と冨岡は、おにぎりを共に食べる仲なのか?」
その言い方も、いつもの明朗快活さを感じることが出来ず、私は更なる不安に駆られた。
「…そんな仲なのかと聞かれれば、そうだと思うのですが……何か…問題が…あったでしょうか…?」
そう師範に聞いてから、
あ、そうか。師範、私が鮭のおにぎりばっかり作るようになって、サツマイモの炊き込みおにぎりを食べる機会が減っちゃったからガッカリしているのかもしれない!そうか!そうに決まってる!
と、そんな結論を導き出していた。