第3章 週末はあなたと2人で【暖和】※裏表現有
"行っていますのキス"にしてはいささか激し過ぎるそれに、私の下半身はほんの少し熱をおびてしまう。杏寿郎さんに、そんな私の気持ちはお見通しだったのか、その身を屈め、私の耳に口を寄せると
「先程の仕返しだ。大人しく待っていなさい。…続きはまた今夜」
と色を含んだ声で言い、更には私の耳をガブリと軽く食んだ。
「…ひゃっ!」
驚きと恥ずかしさで頬にカーッと熱が集まり、私は目を見開き、両手で齧られた耳を隠しながら杏寿郎さんをただ見つめることしかできなかった。
「では、行ってくる!」
そう言うと杏寿郎さんはサッと靴を履き、あっという間に玄関のドアノブに手を掛け今にも家を出て行こうとしている。
「…っ杏寿郎さんの…ばか…!」
苦し紛れに言った私の言葉を
「わはは!向こうを出る時に連絡をする!」
と笑いながら見事にスルーし、
「すずね、愛しているぞ」
と言い、今度こそ本当に出て行ってしまったのだった。取り残された私は、自分の身体をギュッと抱きしめながら
「私も愛してる…行ってらっしゃい」
と聞こえるはずのない言葉を1人呟いた。
槇寿郎様が、瑠火様が、
そして千寿郎さんがいる
あの家が大好き。
でもこうして2人で過ごせるこの部屋も
なんだかんだで大好き。
今夜はどう2人で過ごそうか。
「杏寿郎さん…早く帰って来ないかな」
杏寿郎さんが、帰ってくる時間まで後およそ4時間弱。
完