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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第18章 dear my scarlet【コラボ作品】【暖和】


「えっと…杏寿郎くんは、どうして自分がここにいるか、大体の事情は聞いてるんだよね?」

「はい!俺は本当は20歳で、鬼の使う血鬼術で一時的に身体と記憶が10歳若返ってしまっていると!そう胡蝶さんから聞きました!」

そう答える10歳の杏寿郎さんは、やはりその10歳という年齢にしてはしっかりしている…いや、しっかりし過ぎているような気がして、私は段々と"微笑ましい"と言う気持ちと共に"心配"という気持ちが膨れてくのを感じた。


私が10歳の頃なんて、お父さんやお母さんに甘えてばっかりだった気がする。ここにいる10歳の杏寿郎さんみたいには…絶対に振る舞えない。


そんなことをひとりぼんやり考えていると、10歳の杏寿郎さんがジッと私の木刀と道着を見ていることに気がついた。

「…杏寿郎くん、どうかした?」

杏寿郎さんは私の問いに、道着から私の顔に視線を移し、

「その道着と木刀は…もしかして俺の家の物ではないですか?」

となんだか期待のこもった声で言った。

「はい。その通りです。これは私が…20歳の杏寿郎さんからお借りしているものなんですよ」

私がニコリと笑いながらそう答えると、

「っそうなのですか!?ということは、父上が、父上がまた稽古をつけてくれていると言うことですか!?」

杏寿郎さんが身を乗り出しながらそう私に問うた。

「…っ!」

10歳の杏寿郎さんが目キラキラさせながら発したその言葉に、私の心臓がギュッと何かに掴まれるような、そんな痛みが走った気がした。


そして私は気がついた。


ここにいる10歳の杏寿郎さんは…もう瑠火様を亡くした後の杏寿郎さんなんだ。


それに気がつくと、こんな状況なのにやけに落ち着いて見えるその様子が更に心配になった。そして、10歳の杏寿郎さんが私に投げかけたその期待の篭った質問に、なんと答えたいいか悩んだ。


嘘は…つくべきじゃない。でも、正直に話して杏寿郎さんを傷つけたくない…。


なかなか答えない私に、10歳の杏寿郎さんはその答えを察してしまったのか、パッと明るくしていた表情が段々と曇っていく。


「…私はね、槇寿郎様じゃなくて、杏寿郎さん、10年後のあなたに稽古をつけてもらってるんだよ」

「…俺に…ですか?」

「うん」

私のその答えに、杏寿郎さんは驚いたのか目を丸く見開いた。


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