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鰯料理の盛合せ【鬼滅短編・中編・長編番外編】

第12章 愛おしい音に包まれて【音好きシリーズ】※裏表現有


私の視界に映っているのは、至近距離で私をじっと見つめる杏寿郎さんの顔のみ。

「…話を…するんじゃなかったんですか?」

こんな状況下なのに文句の一つも言えないのは、今杏寿郎さんが私にしていることが、そのまま私が杏寿郎さんにしたことと一緒だったから。

「そのつもりだ。だがこのままでは君は本音を話してはくれないだろう?」

「いいえ。先程のあの言葉が私の本音です」

「そうは思えない」

「そんなことありま…っ!」

急激に熱を帯びる身体と、上がる息に大きな戸惑いを覚え、私は思わず言葉を失う。

「どうした?」

にっこりと怪しい笑みを浮かべながら私を見下ろす杏寿郎さんに、私の下半身からとろりと熱い液が溢れ出てくるのを感じた。

「…っ…あの…この薬……だれから…もらったん…です…?」

杏寿郎さんは私の右耳に唇を寄せ

「宇髄だ」

「…んぅ!」

と、わざと息を吹きかけるように言った。


"天元さんが調合した薬"


以前天元さんが調合したというその薬、いわゆる"媚薬"の効果の絶大さについて須磨さんから聞いたことがあった私は


絶対に我慢出来るはずない


と、ひどく焦っていた。


"あのときはねぇ…天国と地獄が一緒に来たみたいな感じでした!くノ一としては耐えなくてはならないんてますけど…あんなの使われたら、気持ち良すぎてどうしようもありません"


そう須磨さんは笑顔で言っていたものの、その内容のエグさに私は当時とても引いていた。


それが今、私に使われているだなんて信じたくはなかった。けれども今、たった一度しか経験がないはずの私の身体は、

杏寿郎さんが欲しくて欲しくてたまらない

と、そう言っている。

そんな私をさらに追い詰めるように

「宇髄からすずねに伝言だ。"反省して少しは素直になれこの馬鹿野郎"…だそうだ」

そう耳元で囁き、私の耳たぶをカリッと普通だったら少し痛みを感じるくらいの強さで齧る。

けれども今の私にはそれすらも

「…んやぁ!」

ただの快感にしか感じず、理性の糸がジリジリと音を立て燃え始めるのを嫌なくらい実感していた。


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