第1章 ONE And ONLY(仁王雅治)
「何かを勘違いしていないかい?俺は日暮を何とも思っちゃいないよ。ただの同級生でテニス部の部長とマネージャーだ」
そう言った幸村君に「そうか」と言ってしまった雅治
「なんなの?」
アイツと思ったのも束の間
「ありゃ、完全にヤキモチ妬いてんだろぃ」
「ヤキモチ?雅治が?そんな馬鹿な事」
「あるだろ?そのキスマークが証拠じゃねぇか」
「!?」
丸井君に言い当てられてしまったキスマークを隠すにはすでに遅くて
「あの、仁王がとうとう行動に移したのか」
「それにしたってずいぶん遅いですね」
「まぁ、アイツの事だ。どれが本当かなんて分からねぇよ」
そう言った真田君に柳生君、桑原君
"どれが、本当かなんて分からない"それは
彼の2つ名の異名があるからこそだろう。
"立海で最も恐ろしいコート上の詐欺(ペテン)師"。そう、呼ばれている男なだけはあるのかもしれない
そして生憎今日は部活だけという悲しい出来事もあって
「幸村君」
「何だい?」
休憩に入った幸村君に声をかけて、「分かった」との言葉を受け取って、立海を後にする。それは東京での買い出しの件だ
立海の制服を着て東京に行けば、目立つことには違いはないだろう。
氷帝とも青学とも違う制服なのだから、当然と言えば当然なのだけど
家で着替えてからキャリーバックを抱えて電車に乗り込んだ私。誰にも見つからないのは、不幸中の幸いだ