【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第11章 5ヶ月後
数日後
それは、ほんの少し訪れた偶然の瞬間だった。
食堂までの道のり、石畳を敷いた家と家の間の路地。
緩やかに坂を登るように、階段状になっている。
横道へ一本入れば家家のもっと狭い路地へと繋がっていて、木箱や樽などが無造作に置いてあり、人々の暮らしを窺わせた。
隣を歩くハンジは、次の壁外調査こそは巨人捕獲のための装置一式を全て持っていくべきだと一人で持論を展開している。
相槌すら面倒なので「ああ」「そうだな」の二言をひたすら繰り返しているが、眼鏡女はそんなこともお構いなしに喋り続けていた。
気温は低いが、日差しが柔らかい。
気怠さに耐えきれずあくびを漏らす。
ふと、路地に消えていく人影を視界の端に捉えた。
いつも無意識に探していたその姿。
ポーラだ。
「悪い、先行っててくれ」
「ええっ!?リヴァイ?
まだこれからが話の本番なのにぃ!!」
ハンジの絶叫を背中に受けながら人影を追った。
先程までの気怠さは何処へやら、少し心が明るくなるのを感じながら足を速めた。
一つ、二つと樽を避け、角を曲がる。
ポーラとは二馬身も差は開いてなかった。
次第にポーラの歩みが速くなる。
こちらに気付いていないフリをしているが、神経が背中に集中しているのが後ろ姿でわかった。
薄暗い路地には石畳から伝わるヒンヤリとした空気が充満している。
二人分の急ぎ足の靴音が静かに反響していて、表通りの賑やかさとはまるで別世界のような雰囲気を醸し出していた。
「おい」
「…」
「止まれ」
「…」
「アンダーソン」
不意にポーラの足が止まった。
そして振り返った彼女の目には、恐れと怒りが入り混じったような色が浮かんでいた。