【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第10章 4ヶ月後
兵長の部屋のある旧棟から自室のある新棟までは少し距離がある。
渡り廊下などはなく、広い中庭を通らなければいけない。
雨が降っていた。
濡れた前髪を手で払う。
棟の中に入り足音を殺して進む。
涙は止まったが、痙攣のようにしゃくりあげるのがなかなかおさまらない。
「ポーラ?」
「ひっ…!!!!」
不意に後ろから声をかけられて飛び上がるほど驚いた。
反射的に後ろを振り返ると、薄暗い廊下にはエマが立っていた。
「エマ…!びっ…くりした…」
「ごめん、驚かせたわね」
「うん、びっくりしたよ。
どうしたのこんな時間に」
「それはこっちのセリフよポーラ。
あなたこんな時間に外に行っていたの?」
「…」
まずい。
視線が泳ぐ。
いつものエマの鈴が鳴るような声ではない。
納得するまで引き下がらない、そんな声色だった。
「ちょっと走ってたの」
「嘘。雨が降ってるわ」
「…」
「それに、泣いてるじゃない」
やはりバレてしまった。
もっと泣き止んで落ち着いてから新棟に入ればよかった。
「ポーラ、言って。何してたの?何があったの?」
心配そうなエマの声。
こんなに私を心配してくれているエマに、嘘はつけない。
でも本当のことも言えない。