【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第10章 4ヶ月後
終わった、全部終わってしまった。
大股で廊下を歩く。
早朝の廊下にはひんやりと冷たい空気が漂っていて、頬を伝う涙も凍らせてしまうかのようだ。
静かな廊下にグズグズと鼻をすする音だけ下品に鳴り響いている。
終ぞ「愛してる」とは伝えなかった。
伝えられなかった。
そんなことを伝えるくらいなら、もう兵長からは離れてしまった方がいい。
これで良かったんだ。
いつかは言わなければいけないことだった。
兵長が大切な誰かと歩き出せるように。
最近の兵長が恋人のように私に接してくれているのはわかっていた。
それはとても心地良くて、いつまでもそうやって兵長と穏やかに抱き合っていたかった。
けれどもそれで最初の出会いを有耶無耶にされてしまっては、私の女としての尊厳は踏みにじられたままだ。
私は私の心を守った。
例え好きな人と結ばれなくても、自分が自分を大事にしていれば人様に依存することなく自立して生きていける。
人はいつだって死ぬときは一人なんだから。
兵長にはきっと、出会ったときから「大事にしたい」と思える人が現れるだろう。
あれだけカッコいいんだ。
なんて言ったって私が心から好きになった人だ。
負傷したマリアを抱えて飛ぶ姿
一緒に飲んだ紅茶
珍しく笑う時は、フッと柔らかい表情になっていた。
たまに、遠くを見つめていた。
低い声、長い指
仲間を思う、強い心
いくつもいくつも場面が浮かんでは消える。
頭の中では「兵長の部屋に戻れ」と大音量で合唱している。
でも足はひたすら進む。
間違いじゃない。後悔もしない。
私は私の幸せを願っている。
でも兵長。
私は私の幸せと同じくらい、貴方の幸せを祈っています。
「ふっ…ううっ…」
堪えきれなくなり、声を上げて泣いた。