【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第9章 4ヶ月後より前の話
酒で熱くなった頬を、涙が伝う。
ペトラの綺麗な字を思い出していた。
兵長への思いをこうやって他人に口にするのは、初めてのことだった。
言葉にすればするほど、自分の報われない恋が切なくて余計に泣けてくる。
「かわいそうになあ」
一言呟いて、ディモはグラスに残っていた残りの僅かな酒を飲み干した。
「だけどお嬢さん、あんた心までソイツに捧げたら、あんたが苦しくなるだけだろうが」
「え?」
「男ってのは下衆なモンでな。
女の恋心を簡単に利用して、すぐ身体だけの関係に持っていくものさ。
身体だけの関係なら、相手の心に責任を負わなくていいから、楽だしな。
楽な方へ、楽な方へ。そうやって流された男はやっかいだぞ。
いつまでも狡く行こうとするからな。
お嬢さんがソイツのことを好きで、身体を捧げたいと思うのは、まあ若いからしょうがねえ。
けどな、心はアンタ自身がしっかり持ってなきゃダメだろうが。
簡単に弄ばれるのなんて、最初からわかってただろうに」
いつかのリヴァイ兵長との会話を思い出す。
『私の心は私のものです』
『ハッ、好きにしろ。てめぇの心なんざ重たくてたまらねぇ』
そうか。
あのとき私は、純潔を奪われても、心まで奪われてたまるかと抵抗したのだ。
心まで奪われてしまったら、こうなって泣き腫らすことが目に見えていたから。
自分で自分をかわいそうと思いたくない、惨めな思いをしたくない、あのときはそう思っていたんだ。
でも、リヴァイ兵長のことを知れば知るほど、深みに嵌って行ってしまった。
無駄な抵抗だったな。