【R18】私の心は私のもの【リヴァイ/進撃の巨人】
第9章 4ヶ月後より前の話
「それで、お嬢さん。今日は何で泣いていたんだ?」
「え」
不意にディモに話を振られて、間抜けな声が出た。
アルコールに浸った頭では言葉を理解するのに数秒かかった。
「…ああ、今日のことですね」
「そうだ。アンタさっき泣いていただろう」
「ええ、泣いていましたね」
ディモが真っ直ぐとこちらを見ている。
お節介な人だ。
フレーゲルも両手でグラスを包み込みながら、私の答えを待っていた。
別にこの2人に泣いていた理由を馬鹿正直に話す必要はない。
なんて誤魔化そうか、と考える。
大事な人が死んだ、訓練でヘマをした、
いくらでも嘘はつけそうだ。
しかし閃いては消えていく作り話たちを、手繰り寄せて口に出す気力が無かった。
私は、今の気持ちを吐き出してしまいたい。
誰かに聞いてほしい。
酔って思考が低下していることもあるのか、とにかく全部吐き出してしまいたかった。
もう二度と会うこともないであろう、この親子ならなにかと好都合だ。
もういいや。言ってしまえ。
「私には、好きな人がいるんです」
話し始めた私を、親子は静かに見守っていた。